酵母エキスについて

酵母ってご存じですか?

古来より人類は微生物を巧みに利用し、食生活を豊かにする知恵を身につけてきました。微生物の中でも、特に酵母は、ビール・ワイン・ウイスキーや日本酒などの酒類にアルコールや香りを与えたり、主食であるパンをふっくらさせたり、味噌や醤油などの調味料の味や香りを作ったりしており、食生活において非常に重要な位置を占めてきました。
また、健康食品においては、アミノ酸やビタミン・ミネラルなどの補強目的でも多用されています。

トルラ酵母とは

弊社の酵母エキスに使用しているトルラ酵母(Candida utilis)は、第一次世界大戦中、ドイツが食糧資源、特にタンパク質確保のために製造を開始して以来、食飼料用酵母として利用されるようになりました。
現在トルラ酵母は、ドイツで栄養補助食品として利用されているほか、アメリカではFDA(FoodandDrugAdministration:米国連邦食品医薬品局)がその安全性を認めており、世界各国で数多くの食品に利用されています。

酵母エキスとは

酵母エキスは酵母の有用な成分を自己消化や酵素、熱水などの処理を行うことにより抽出されたエキスのことです。主成分としてアミノ酸や核酸関連物質、ミネラル、ビタミン類を含み調味料や微生物の培地などに用いられます。
現在の食品と食品添加物との分類では、酵母エキスは食品添加物ではなく、醤油や昆布エキスなどと同様に食品に分類されています。

「大きな目小さな目」(第62号、農林水産消費技術センター発行-より抜粋)

酵母エキスの機能性と展開

酵母は果実の表面、樹液、花の蜜腺、土壌や海洋に至るまで自然界に広く分布しています。
我々人類はこれら身近に存在する酵母を様々な食品加工に用いることにより、豊かな食文化を築いてきました。(表-1)に酵母の利用例について示しました。日本古来の発酵食品である醤油、味噌などやアルコール生産能を活かした酒・ビール・ワインなどの生産、その他製パン等にも利用されています。
このように、食用に供してきた酵母は歴史も古く、安全性も高いものとされており、ビール酵母やパン酵母、トルラ酵母は、FDA(Food and Drug Administration:米国連邦食品医薬品局)で、科学的安全性が認められています。

表-1 酵母の利用例

利用成分 用途
菌体の利用 菌体 食品、健康食品、機能性飼料、飼料、医薬品、肥料
抽出 酵母エキス 食品(調味料等)、健康食品、医薬品、化粧品、ペットフード、飼料、肥料、植物・微生物培地
精製 アミノ酸類 健康食品、医薬品、飼料
酵母核酸(RNA) 食品(調味料等)、健康食品
糖類(トレハロース等) 食品(甘味料、保存料等)、化粧品(保湿等)
油脂・脂肪酸
ビタミン類(ビタミンB群等) 健康食品、医薬品
プロビタミン類(ステロイド等) 健康食品、医薬品
補酵素(NAD、CoA等) 医薬品(検査薬)、試薬、健康食品
グルタチオン 医薬品、化粧品、健康食品
生理活性物質
酵素類(ラクターゼ等) 食品製造等工業用
発酵・代謝 発酵・代謝 酒類(ビール、清酒、果実酒、ウイスキー等)
甘味料(エリスリトール等)
エステル
有機酸
調味料(醤油、味噌、発酵調味料等)
パン、パイ、クッキー

酵母エキスの原料となる酵母には、醸造工業において副生するビール酵母と糖蜜やブドウ糖を原料とするパン酵母やトルラ酵母などの培養酵母(primary yeast)があります。ビール酵母やパン酵母はSaccharomyces cerevisiaeに分類され、アルコール発酵力が強くビール、ぶどう酒、清酒の製造や製パンに用いられます。トルラ酵母はCandida utilisに分類されます。この酵母はアルコール発酵力が弱く、生育速度が速いので、核酸やグルタチオンなどの生産にも用いられています。またこの種の酵母は、醤油の熟成酵母としても知られています。 酵母エキスは食品であり、酵母から、酵素分解抽出、自己消化法または熱水抽出法などの方法により製造されます。近年では、調味料の分野で天然・健康・安全がキーワードとなり、多様な呈味性を持ち、品質および供給の安定な酵母エキスが高い評価を受け、急速に伸張しています。このような背景もあり、“酵母エキス=天然調味料”というイメージが定着しています。
一方、酵母エキス中には、アミノ酸、ペプチド、核酸成分や糖類および微量成分のビタミン類やミネラル分などが含まれています。これらの成分は様々な機能性を有しており、酵母エキス自身が機能性食品といえます。現在、それらの効能を活かし、健康食品または健康食品素材として用いられ始めています。